21世紀の戦争と平和: 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか

著者のあまりに大胆な提言に愕然とすると共に、国際平和の枠組みは国連から考えていくべきではないかと思った。徴兵制の復活は戦前の軍国主義への道を国民に想起させ、嫌悪感をもたらすばかりである。集団的自衛権の容認は日米同盟の強化として理解出来るとしても、徴兵制によりどれだけ防衛力が強化されるのであろうか？いかなる自衛のための組織が出来るのであろうか？このような自国ファースト的な発想は好ましくない。カントの永久平和論は彼の道徳哲学から生まれたものであり、そもそも国際的平和組織の確立を説いたものではないか？個人であれ、国家であれ、相手の人格尊重を目的とする「目的の国」をつくることがカントの道徳哲学の実践編である。韓国の徴兵制は北朝鮮との朝鮮戦争が終結しておらず、現実に隣国の軍事的脅威が存在するという事実によるものだ。地政学的に見ても仕方ない。フランスやスウェーデンの場合はそれぞれの実情が日本の置かれた現状とは異なるので、参考にすべきではない。軍備（武装）の強化の行き着くところは核兵器の所有しかない。これは平和憲法の精神に反する。日本の徴兵制復活は、中国や北朝鮮、ロシアはもとより、隣国の韓国や東南アジア諸国にも軍事的脅威をあたえるに違いない。善隣外交を忘れず、隣国や友好国とのさらなる関係改善を平和的手段で模索するのが、戦後日本が選んだ道ではないか？著者の主張を本書を熟読することによって理解したい。テレビ朝日「朝まで生テレビ」における著者の主張にも慎重に耳を傾けたいものだ。まずは本書を読んでみてはどうだろうか。